第10回 障害年金や手帳について
第10回です。今回は障害年金や手帳について私なりの考えや当院での扱い方を書いていきます。細かい制度については、最寄りの市役所などの公共機関にお尋ねください。まずは手帳から。
手帳について
正式には精神障害者保健福祉手帳と言います。もちろん、当院で手帳というと身体ではなく、精神の手帳です。初診日から半年たっていることが条件の一つです。詳しくは書きませんが、NHKや鉄道、バス、タクシーなどの料金、携帯電話料金の割引などが受けられます。ただ、私が考える最大のメリットは、就労面です。簡単に言うと、「障害者枠」で就活することが出来ます。うつ病が長引いて通常の労働に耐えられない人、発達障害や統合失調症があり、周りとうまくコミュニケーションを取ることが苦手な人、などにお勧めできます。私も制度を完全に把握しているわけではありませんが、ざっくりというと、障害者枠だと、仕事のノルマが一般就労ほど厳しくないことが多いです。ただ、その分、給料は低め。時々、手帳を取るデメリットを心配する方もいますが、会社で働くという面からすると、給料面以外はほぼないと思われます。もちろん、手帳を持っているからといって、絶対に障害者枠で働かなければいけないというわけでもありません。しいてデメリットをあげるとすれば、生命保険への加入や住宅ローンを組むといったことの審査が厳しくなる可能性があります。ただ、私の経験上、それで揉めたという話は患者様から聞いたことはありません。
年金について
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があります。細かい違いは市役所などにお尋ねください。初診日から1年半たっていることが条件の一つになります。ただ、時々、「5年前に1度だけ他のメンタルクリニックに受診した。もう既にそこから1年半たっているからすぐ年金の診断書を書いてほしい」と初診でおっしゃる患者様がいますが、当院ではすぐには書いていません。おそらく他院でもそうだと思われます。やはり診察して、最低半年~1年は経過を追わないと書けないことが多いです。さて、どのような方が年金の対象になるのでしょうか?とてもざっくりした私見を述べると、「働けない人」が対象になります。例えば、年金1級の人はどのようなイメージ(あくまでイメージです)かというと、「精神科に入退院を繰り返し、最近、入院になってないだけでも、本人からすると十分に調子がいい。仕事なんて本人も家族も医者も一切考えたことすらない。」というような方々です。もちろん1級が一番重いです。知的障害なら、「知的障害が強く、ほぼ意味のある疎通ができない」方々です。2級は「精神科には過去に入院したことはあるが、1~2回だけ。家では落ち着いて生活できているけど、症状が強くて、外出や家事をするのも精いっぱい。仕事なんてとてもできない」という方々です。病状が安定せず、家族の援助なしには日常生活もやや困難です。3級は「仕事は何とかできる。バイトや正職員の入職時の面接はパスできる。ただ、仕事や人間関係のストレスがちょっとでもかかると、すぐに調子が悪くなって、職場に行けなくなり、仕事が長続きしない。」という方々です。繰り返しますが、あくまでイメージです。年金はもちろんお金をもらえることがメリットなのですが、デメリットとしてその分、申請が煩雑です。医師が書く診断書についても病状についての記載スペースが多く、作成に時間がかかります。また、過去、受診した医療機関からも情報を得たりする必要があります。一人で難しい場合は、家族や市役所の人にサポートしてもらいましょう。当然ですが、病状はあるがままを書くことになります。最終的な年金の等級などの判断は、行政になります。以上のように年金は患者様、医師も共に大変なので、軽症な場合は、私の方で「申し訳ないが、貴方は軽症だから、現時点では年金はまず通らないと思う。だから書かない。」とはっきりお伝えするようにしています。
今回は、以上です。第8回の休職の診断書の時と同様に、ちゃんと当院の指示通りに定期的に受診をしていない方については作成を断りますので、ご注意願います。