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第7回 見かけの難治性うつ病について

第7回です。難治性うつ病について書いていきます。難治性の定義は様々ですが、一般的な治療行っても30%はうつが治らないと言われています。中には、本当に難治なうつ病の方もいます。しかしながら、実は見かけだけ難治なうつ病に見えても、本当は違うということも臨床上はよく経験します。典型的なうつが良くならない原因などについて書いていきます。

 

実はそもそもうつ病ではない

 

どういうことか解説しましょう。簡単に言うと、躁うつ病や甲状腺の病気やステロイドなど精神的な副作用のある薬をほかの科から出されている場合などです。躁うつ病は、実は診断の難しい病気です。精神科に受診してから、数年たってやっと躁うつ病と診断される人も珍しくありません。躁状態は、うつ状態と違って、自覚的にも他覚的にも気づかれにくいのです。うつ状態の時は「落ち込んでいる」「元気がない」「食欲がない」「顔色が悪い」「仕事のパフォーマンスが下がる」など、比較的分かりやすいのですが、躁状態の時は、「おしゃべりすぎる」「(いきなり弁護士を目指す、起業して金持ちになる、など)言っていることがでかくなる」「服装が派手になる」「金遣いが荒くなる」などの症状が出て、これがわかりにくいことが多いのです。まず、躁状態の時に、他人から患者様をみたときに、「ん?普段より元気すぎないか?ちょっと変だぞ」と思っても、よほど躁状態がひどかったり、もともとかなり親密な関係でないとなかなかそのことを本人に指摘できません。さらに、患者本人としても、躁状態の時はテンションが高くなり、「この元気があるときこそが本来の自分の状態なんだ!」と思い込んでしまい、なかなか自分では気づきにくいという特徴があります。また、以前書きましたが、甲状腺の病気は、気分のムラが出ることが多く、うつ病と間違われることもあります。もちろん、抗うつ薬やカウンセリングは効かず、甲状腺の専門医に受診しないことには治りません。

 

うつ状態になる原因を取り込んでいる

 

これはどういうことでしょうか。簡単に言うと、酒、他の科の治療薬が原因のこともあるということです。酒はうつ状態の人には厳禁です。何度も書いているように、酒は不眠を起こします。さらに、酒は化学物質ですから、精神科の薬と相性が悪く、薬の効果が出にくくなります。また、膠原病などでステロイドを飲んでいる人もいます。ステロイドだけではなく、副作用でうつ状態になる薬がいくつもあります。ただ、その薬を中止できるのかというと、命にかかわる病気のこともあり、難しい問題です。私は精神科だけでなく、てんかんをよく診ているので、抗てんかん薬であるレベチラセタムやペランパネルで気分が落ち込んでいる人をよく見ます。別の抗てんかん薬に変えると気分が改善することもよく経験します。患者様や家族に「この薬を飲んでからイライラや落ち込みが始まった、ということはないですか?」と聞くと、原因が判明することがあります。

 

実はちゃんと薬を飲んでいない

 

まさかと思われるかもしれませんが、処方箋通りに薬を飲んでいない人は意外と多いです。私は「ちゃんと飲み忘れなく飲んでいますか?」と毎回毎回診察で確認するようにしています。医師は「患者さんは当然処方箋通り飲んでいるだろう」と思いがちですが、全然そんなことはないのです。それでは治るはずのものも治らなくて当然です。飲み忘れがあったとしても、せめて2週間に1回ぐらいにしてほしいところです。もちろん理想は飲み忘れゼロですが、何事も完璧主義だとうまくいかないので、できるだけ飲めるようにしましょう。高齢者の方には「お薬カレンダーを使うといいですよ」と伝えることもあります。

 

今回は以上になります。

 

 

 

 

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