第5回 休職中の過ごし方と治療
第5回です。前回、適応障害の治療や対応について書きました。今回は、休職が必要になった場合、休職中に何をすればいいかを書きたいと思います。まずは、前回は上司のパワハラにばかりスポットを当ててしまったので、簡単によくあるその他のパターンにも軽く触れてみます。
同僚(または同級生)が原因の場合
同僚から嫌がらせを受けている場合はどうでしょうか?これも実は微妙な話で、どこまでが嫌がらせで、どこまでが単に気が合わないだけなのか、線引きが難しいです。前回と同様、まずは正直に上司(または学校の先生)に言ってみることがよいかと思われます。
配偶者が原因の場合
この場合はほとんど、私ができることはあまりないのが実情です。明らかなDVなどの場合は、警察に相談するのが望ましいと考えますが、下手に精神科医が口出ししていい領域ではないと思います。ただ、そこまでひどくはないけど、配偶者のこういうところが嫌で悩んでいるというレベルの方もおられますので、正直に「直してほしい」と伝えることが重要かと思います。ただ、こればかりは伝えてみてどう転ぶのか分からず、難しいところです。中には、配偶者には言い出せず、薬を飲んで我慢している患者様もおられます。正解はない難しい問題です。
休職中の過ごした方
さて、話を本題に戻します。前回も書いた通り、職場を休職したら、まずは「ゆっくりと休む」ということが重要です。調子が悪くて、何もやる気が起こらない場合、一日中家でごろごろしていても仕方ありません。ただ、そのようなレベルの方にはすでに抗うつ薬を処方してことが多いです。薬が効いてきて、または、薬なしで休養だけで回復してきた場合、次にやるべきことは、外出です。本人が行きたいところならどこでも構いません。まずは、家の周りの散歩から始めてみることをお勧めします。徐々に近所のコンビニやスーパーなど歩く範囲を広げてみるとよいでしょう。他にも、図書館、公園、遊園地、ショッピングモール、カフェ、映画館、動物園、など、どこでも構いません。足が悪いなどの理由がある方の場合は、家にいても構いません。ただ、本人の体の許す限り、やはり体は動かしたほうがいいです。家事を手伝うことを勧めることが多いです。とにかく、何もせずに家でずっとダラダラするというのは良くありません。昼夜逆転のきっかけにもなるので、昼間はできるだけ活動してもらうことを勧めます。話はずれますが、よく休職してすぐに、または初診の時に「退職したい」と訴える方がいます。私は、これに対して、「今すぐには判断しないように。今はうつ状態で、ある意味頭が麻痺している状態であり、正常な判断ができない。うつが良くなってから、すっきりした頭で考えて、退職したいのなら止めはしないが、とにかく今は結論を先延ばしにするように。」と説明しています。
家族の配慮
家族は患者様に対して、どういう態度で接すればいいのでしょうか?私は「普段通りでいい」と伝えています。下手に気を使ったりする必要はありません。ただ、「早く復職しないと」などと焦らせたり、本人を落ち込ませるような発言は控えてほしいと思います。散歩に付き合ってもらうと助かります。
回復してきたら
徐々に元気が出てきたら、外出の回数を増やしていくことを勧めます。私の場合、復職の条件として、「生活リズムが整っていること」「週5日外出を安定してできていること」をあげることが多いです。当院に受診する方のうち、ほとんどの方が休職する前の段階では、「週5日、40時間以上」働いています。ということは逆に言うと、休んでいる段階で自分の好きなところに週5日、せめて1日5~6時間は外出できる気力、体力が無いと、とてもではありませんが復職はできません。復職したら、当然ですが仕事をしなければならず、仕事には相応の責任が伴いますので、もっときつい週5日の外出が待っているわけですから。
今回は以上となります。