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第3回 体の病気などが原因の症状について

第3回です。今回は、体の病気などが原因の症状について説明してきます。精神疾患のほとんどは脳に原因があると言われています。ドーパミンやセロトニンなどの仮説がありますが、あくまで仮説であり、本当のところはまだ解明されていない部分も多いのです。体が原因の場合、まさかそれが原因とは思わず、不眠やうつ、イライラなどで精神科に受診し、後から体の病気が原因だったとわかるケースを時々経験します。代表的なものだけ、今回、紹介します。

 

甲状腺の病気

 

甲状腺の病気は、イライラ、動悸、不安、落ち込み、倦怠感などの症状が出ることがあり、これはうつ病、不安障害、パニック障害などの症状と共通している部分が多いのです。なので、以上のような症状がある場合には、当院では、甲状腺ホルモンを測ってみることがあります。実際に、以前通っていた精神科では、うつ病と診断されており、複数の抗うつ薬が無効で、落ち込みが続いていた方に、当院にて、甲状腺ホルモンを測ってみたところ、甲状腺機能低下症(橋本病)を疑わせる数値だったことがありました。当院では簡単なホルモン雌しか検査できないので、近くにある甲状腺の専門医に紹介状を書き、受診してもらったところ、甲状腺機能低下症と確定診断され、甲状腺の薬ですっかり元気になりました。もちろん、抗うつ薬はその後中止しましたが、調子が良いまま経過され、無事、当院での治療は終了となりました。当院では、おおよそ年に1~2人はこのような方が見つかります。精神疾患と甲状腺の病気は使う薬がまったく違うので、これは侮れません。

 

睡眠時無呼吸症候群

 

寝ているときに、いびきをかき、さらにそれがひどいと、睡眠中に無呼吸を起こす病気です。なぜ精神科と関わりが深いというと、睡眠時無呼吸症候群がよくうつ病と合併するからです。また、「夜にちゃんと寝ても、昼間眠くして仕方ないんです」と訴える方の中に、睡眠時無呼吸症候群が見つかる方もいます。なので、当院では、いわゆるメタボ体系の方や抗うつ薬を複数試しても治りが悪いうつの方には、一度睡眠時無呼吸症候群が隠れていないか、専門病院で診てもらうように勧めることがあります。当院の近くに「すなおクリニック」というメンタルクリニックがあり、そこが睡眠疾患を多くみているので紹介状を書くことが多いです。もちろん「大宮 睡眠外来」「埼玉 睡眠外来」と検索してもらって、見つかった睡眠外来に受診してもらっても構いません。捕捉ですが、睡眠時無呼吸症候群があると、ベンゾジアゼピン系という精神科でよく使われる睡眠薬を飲むと、かえって睡眠時無呼吸が悪化してしまうこともあるので、注意が必要です。

 

アルコール

 

以前も書きましたが、アルコールは不眠を悪化させます。一般的に「寝酒」と言って、酒を飲むとよく眠れると思われがちですが、これは間違いです。確かに、寝つきは少しは良くなるでしょう。しかし、その後の睡眠が浅いところで推移しがちになり、途中で目が覚めることが多くなり、睡眠の質は結局大幅に下がってしまうのです。また、酒はうつも悪化させます。アルコールはアセトアルデヒドという化学物質であり、脳に作用し、うつを直接的に悪化させます。そればかりか、アルコールは精神科の薬との相性が悪く、せっかく処方した薬の効果が下がってしまいます。なので、私の場合、特にうつ病の方には「酒を飲むと、睡眠は悪化するし、直接的にうつを悪化させるし、せっかくの抗うつ薬の邪魔もするし、いいこと一つもないですよ。治りたかったら、まずは数か月の間は断酒するか、無理なら酒を極力減らしてください」と説明しています。中には「これまでの先生からは、そんなこと言われなかった」と驚かれる方もいますが、当院では少しでも良くなってもらう確率を高めるために、そのように勧めています。

 

今回のブログは以上になります。精神科は奥が深く、意外なことが症状の原因であることもあり、やはり医師としてもやりがいのある仕事です。

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